大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)2950号 判決

つぎに、控訴人らは、本件は同訴外人の日常の家事代理権限を超えた代理行為であると主張し、前認定の事実によれば、当時同訴外人は被控訴人の妻であつたことを認めることができるから、同訴外人に日常の家事に関する代理権限を肯認することができる。そこで、控訴人増田が同訴外人に本件処分権限ありと信ずべき正当の理由を有していたかについてみるに、一般に妻は夫と同居していて夫の実印を容易に入手することができる立場にあるものであるから、妻が夫の実印を所持していることだけでただちに夫所有の不動産処分の代理権があると信ずべきものではないのみならず、前掲証人所すみ子の証言、前掲被控訴人本人尋問の結果(第一、二回)および控訴人増田本人尋問の結果(第一回)に前記認定の事実を総合すれば、同訴外人は本件貸借にあたり当初前記土地建物は自分が所有するものであると称していたので、同控訴人も同訴外人との貸借を考えていたところ、右土地建物の所有者が被控訴人であることが判明し、被控訴人を借主および売主として本件取引に及んだこと、同控訴人は不動産業者であることおよび同控訴人は被控訴人と同じ千葉県長生郡に居住しているものであるが、本件取引に関してはもつぱら同訴外人と交渉するだけで被控訴人とは一度も交渉せず、また交渉しようとしたこともなかつたことを認めることができる(前掲控訴人増田本人尋問の結果(第二回)中右認定に反する部分は採用できない。)のであり、右のごとく同訴外人が当初本件土地建物の所有者と称していたのに実はそうでなかつたのであるから、不動産業者として同控訴人はその間の事情および処分の代理権限の存否については当然疑念をいだくべきであつたということができる。しかも、本人たる被控訴人は同控訴人とは同じ郡内に居住するものであるから、同控訴人において被控訴人に連絡するなどして右疑問点について調査するのはきわめて容易なことといえるのに、同控訴人はこのような簡単な調査もしていないのであつて、これらの事情よりすれば、本件には、同訴外人に代理権限があると信ずべき正当の理由があつたとはいえず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(小川 小林 川口)

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